
この記事では、以下の内容についてまとめています。
- Apple M1について
- MacBook Pro 13インチ M1の外観チェック
- MacBook Pro 13インチ M1の各種ベンチマーク
目次
- Apple M1について
- Apple Siliconとは?
- 騒がれている理由
- 自社開発のメリット
- Apple M1のすごさ
- M1 MacBook Proの外観と性能を実機でチェック
Apple M1について
Apple M1とは?
Appleが自社で設計開発したCPU(SoC)です。
人体でいうところの脳であり、処理を行う部品です。
騒がれている理由
M1登場以前のMacは、長らくIntel CPUを搭載していました。

ところが突然、Appleが自社で開発することに決めたわけです。
これが騒がれている1番の理由です。

かなり前から、自社開発への切り替えは進めていた模様。
Intelはかれこれ5年間ほとんど進歩しておらず、その間に彗星のごとく登場したAMD Ryzenに完全に抜き去られています。
AppleにとってIntelは、性能イマイチなうえ開発ペースの足を引っ張る困った存在になっていました。
自社開発のメリット
- ハードウェアとソフトウェアのチューニングがしやすい
- 開発ペースをコントロールしやすい
- 開発コストを抑えられる
- 商品価格を下げられる
ハードとソフトのチューニングがしやすいのは特に大きなメリット。
今回新たに登場したM1チップ搭載Macの様々なベンチマークがそれを如実に表しています。
Intel Macを選ぶ理由が、ほとんどなくなってしまいました。
Apple M1のすごさ

ここからは少し深いお話ですが、初心者の方でもわかるよう解説してゆきます。
※興味のない方は飛ばしてください。
疑いたくなるほどの性能向上
Appleによると、M1チップ搭載のMac miniは以前のモデルと比較して
- CPU性能が最大3倍高速
- グラフィックスが最大6倍高速
- 機械学習が最大15倍高速
というケタ外れなパフォーマンスでありながら、消費電力は圧倒的に抑えられています。
総合的なパフォーマンスが極めて高く非の打ち所がないチップで、様々なベンチマーク結果からもAppleが「豪語はしていない」ことが分かります。
引き合いに出されているのがIntelの下位チップなのでフェアでないという意見もありますが、上位チップと比較しても圧倒的な性能です。
誰がどう見ても「ぶっ飛んだチップ」です。
世界初の5nmプロセスルール

プロセスルールとは
CPU内部の回路の幅(細さ)のことです。
CPUは膨大な数の回路で構成されています。
プロセスルールが小さいほどより多くのトランジスタを配置でき、CPU性能が向上します。
プロセスルールはCPU性能に密接に関係する極めて重要な要素で、各社がこれをより小さく、微細化することにしのぎを削ってきました。
これからも、プロセスルールの微細化はCPUの性能向上に欠かせない作業となります。
今回新しく登場したApple M1のプロセスルールは、5nm(ナノメートル)です。
5nmは、10万分の5メートルです。
0.0000005cmになります。
途方もなく小さな世界です。
2021年6月現在の大手半導体メーカーのプロセスルールは
- Apple → 5nm
- AMD → 7nm(Zen3アーキテクチャ)
- NVIDIA → 8nm (Ampereアーキテクチャ)
- Intel → 12nm(Rocket Lake-Sアーキテクチャ)
半導体といえばIntel。CPUと言えばIntelですが

そのIntelは2015年のSkylakeアーキテクチャから最新のRocket Lake-Sアーキテクチャまで依然として14nmプロセスのままで、微細化に難航しています。
細かな内部調整で性能向上を実現してきましたが、限界がきています。
最大のライバルであるAMDとの勝負ではAMDがRyzenを送り出した時点で危うくなり、第3世代Ryzen登場で完全に追いつかれ、第4世代Ryzenには完全敗北です。
そのAMDですら7nm。
Appleはさらに先をいく5nmプロセスです。
Appleの技術力・設計力がいかに凄まじいか、おわかりいただけると思います。
優秀なコア構成
Apple M1はiPhone7のSoC A10 Fusionから採用されたbig.LITTLEに似た構成を採用しており、内部は

- 4つの高性能コア (Firestorm)
- 4つの高効率コア (Icestorm)
からなり計8コアです。
高性能コアFirestormはハイパフォーマンスな瞬発型コアで、最大3.2GHzで駆動し負荷の高い処理を捌きます。
高効率コアIcestormは省エネ型コア。
Firestormと比較して10%の消費電力で動作し、負荷の少ない処理を担当します。
それぞれに対してmacOSが適切なタスクを割り振るため
Intel CPU Macと比較すると無駄な処理が極めて少なく、これがバッテリー駆動時間の向上に寄与しています。
Apple M1の解説動画
株式会社テカナリエさまの解説動画が感動的なほどにわかりやすいです。
MacBook Pro M1の外観と性能を実機でチェック
外観
外観は従来のIntel版と変化ありません。
なので「あ、M1だ!かっこいい!」と周囲の人が見分けることは困難です。

ディスプレイ裏面のリンゴマークは光りません。

右側面はイヤホンジャックのみ。

左側面にはThunderbolt / USB 4ポート x 2があります。

キーボード部分も、従来のIntel版と変化はありません。

搭載されているのはMagic KeyboardとTouch Bar、Touch IDです。
Escキーは独立しており、矢印キーは逆T字型の配列になっています。
という感じで、外観・デザインは従来のMacBook Proとほとんど変わらないことが分かります。
ベンチマーク結果
実際にMacBook Proで3つのベンチマークを測定してみました。
測定環境
MacBook Pro 13inch 2020 M1
OS : macOS Big Sur 11.2.3
CPU : Apple M1
メモリ : 8GB
ストレージ : 512GB SSD

CPU性能
GeekBench Ver5.4.0で測定したCPUスコアは

- シングルコアスコア:1737
- マルチコアスコア:7655
でした。
他のIntel MacのCPUスコアは以下の表のとおりで、
CPU名 | コア数 | シングルコアスコア | マルチコアスコア | 備考 |
Apple M1 | 8 | 1737 | 7655 | |
Core i5 1038NG7 | 4コア8スレッド | 1143 | 4227 | MacBook Pro 13インチ2020 |
Core i9 9980HK | 8コア16スレッド | 1092 | 6847 | MacBook Pro 16インチ 最上位 |
Xeon W-3223 | 8コア16スレッド | 1019 | 7987 | Mac Pro Late2019 |
Xeon W-3275M | 28コア56スレッド | 1124 | 19246 | Mac Pro Late2019(143万円) |
M1チップは、シングルコアスコアが
- 歴代Macで最速
- MacBook Pro 13インチ Core i5 1038GN7の約1.5倍
- MacBook Pro 16インチ Core i9 9980HK(30万円)の約1.8倍
マルチコアスコアでは
- MacBook Pro 13インチ Core i5 1038GN7の約1.8倍
- MacBook Pro 16インチ Core i9 9980HK(30万円)を上回る
- Mac Pro Late2019の8コアXeon(66万円)に迫る
- 10コア以上のCore i9 or Xeonが相手になると厳しい
- iMac ProとMac Pro Late2019のXeon上位モデルには遠く及ばず
最後は意地悪な比較ですが、そもそもノートPCのチップなのにXeon8コアと互角にやれる時点でおかしいのです。
イカれてます。(褒め言葉)
SSD性能
定番のストレージベンチマーク「AmorphousDiskMark」でMacBook Pro 2020 M1のSSD速度を測定してみました。

結果は
- 読み込み速度が3411.43MB/s
- 書き込み速度が3000.60MB/s
でした。
512GBモデルでこの速さなので、1TBモデルはさらに高速と思われます。
最新規格であるNVMe PCIe4.0の速度には及びませんが、Proの名に恥じない極めて高速なSSDです。
GPU性能
GeekBench Ver5.4.0で測定したGPUスコア(Metal)は21,482でした。

他のMacのGPUスコアは以下の表のとおりで、
CPU名 | スコア | 備考 |
Apple M1 | 21482 | |
Apple A12Z | 12008 | iPad Pro 第4世代 |
Intel Iris Plus 655 | 6857 | MacBook Pro 13インチ2020 |
AMD Radeon Pro 5300 | 36910 | MacBook Pro 16インチ 標準 |
AMD Radeon Pro 5700XT | 74768 | iMac Retina 5K 2020 最上位 |
Apple M1のグラフィック性能は
- 前モデルMacBook Pro 13インチのIntel Iris Plus 655の3倍以上
- MacBook Pro 16インチモデルの標準GPU Radeon Pro 5300の約60%
- iMac Retina 5Kの最上位GPU Radeon Pro 5700XTの約30%
でした。
内蔵GPUとしては極めて優秀ですが、大きな電力を必要とする独立GPUにはまだまだ敵わないようです。
4K以上の動画編集をゴリゴリ行ったり、マイニングをさせるにはパワー不足かもしれません。
ちなみに、iPad Pro第4世代のA12Zとの比較では、M1の方が約1.8倍高いスコアでした。
以上が、Apple M1の各種ベンチマーク結果でした。